私は以前、がん保険の加入を検討するにあたり、がんに対する不安に煽られ、がんだけを特別扱いしていないか、と問いかけをしました。
がんに対する不安は大きく分けて2つあると思います。1つはがんが死に至る病であること、もう1つは高額な医療費であることです。
しかし、近年の医療技術の進歩により、がんの多くは治る病気になりました。
その一方で、がん治療にかかる医療費はまだまだ高額であるという認識が定着しており、保障の対象ががんに限定しているにも関わらず「がん保険」という特有のジャンルは依然として人気です。
しかし、当然ですが、人はがん以外の病気やケガに見舞われるリスクも多分にあります。どちらかと言えば、がん以外の疾病にかかることの方が可能性は高いのです。
厚生労働省が発表した平成26年度の「傷病分類別医科診療医療費」を見てみると、国民医療費の総額は29兆円余り。その内訳として、傷病分類別の上位5位は以下の通りとなっています。
「傷病分類別医科診療医療費」(平成26年度)
第1位 循環器系の疾患 5兆8,892億円(20.1%)
第2位 新生物(がん) 3兆9,637億円(13.6%)
第3位 筋骨格系及び結合組織の疾患 2兆2,847億円(7.8%)
第4位 呼吸器系の疾患 2兆1,772億円(7.4%)
第5位 損傷、中毒及びその他の外因疾患 2兆1,667億円(7.4%)(厚生労働省調べ)
傷病分類別で見ると、新生物(がん)は全体の13.6%でしかありません。
がんは先進医療を除き、社会保険制度の適用を受けることができますし、別途医療保険などに加入していれば当然がんも保障されます。
それにも関わらず、わざわざがんだけのために「がん保険」に加入する必要性が果たしてどれだけあるでしょうか。
人々はがんを恐れるあまり「がん保険にさえ入っていれば万一の時も安心」という安直な安心感を、がん保険に加入することで買っています。
しかし、がん保険に加入してもがんを予防することにはなりませんし、ましてやがんが治るわけでもありません。
・がんに対する知識は十分ですか?
・貯金などの備えはしっかりしていますか?
・がんにならぬよう健康に十分留意していますか?
がん保険に加入する前に冷静に置かれている状況を確認してみましょう。そして、がんを恐れずにしっかりと向き合い、本当に必要かどうかを自らの意思で判断しましょう。