がん保険を考える~高度先進医療特約は果たして必要なのか

そもそも「先進医療」って何?

がん保険を考える際に特徴的な給付の1つである「先進医療特約」。少し前までは「高度先進医療特約」と付けている保険会社もありました。

その名の通り、合計で1,000万円まで、保険適用が受けられない先進医療が受けられるというもので、がん保険の販売員の売り文句にもなっています。

「先進医療」と聞くと、いかにも最先端で、がんに効果的抜群な治療が受けられると思いがちですが、残念ながら意味合いは少し異なります。

先進医療とは、保険適用の対象となっていないものの、保険適用できるかを評価するため、保険診療との併用を認めた治療のことを指します。

通常、保険診療とその他の治療行為(保険外診療)の併用(混合診療)はできませんが、保険適用となる過程である一部の医療行為については、厚生労働省が限定的に認可しており、この治療行為の総称が「先進医療」なのです。

ですから、残念ながら最先端で画期的ながん治療の方法である、という訳では必ずしもないことをまず頭に入れておいてください。

がん保険には2タイプある、先進医療特約がある保険とない保険

がん保険を検討される方は誰もが気がつかれると思いますが、実はこの先進医療特約は全てのがん保険に付保されているわけではありません。

例えば、アフラックのがん保険に先進医療特約は付いていますが、東京海上日動あんしん生命のがん保険にはありません。

その代わりに東京海上日動あんしん生命は、先進医療特約が付保されていない分、診断給付金に厚く、再発のたびに何度も給付されます。一方、アフラックは一度がん保険の適用を受けると、その時点で保険関係は消滅してしまいます。

再発リスクへの備えを優先するべきか、先進医療特約を優先するべきか、過去には私も散々悩まされました。

しかし、先進医療の実態を理解すると、自ずとその回答も導かれていきます。

先進医療に掛かるお金と治療を受けられる場所について

それでは、まず先進医療に掛かる治療費についてみていきましょう。

中央社会保険医療協議会の先進医療の実績報告によりますと、先進医療の技術料総額から件数で割り戻すと、1件当たり平均643,268円となります。(中央社会保険医療協議会「平成27年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」)

「1,000万円まで」などと先進医療特約の補償額に釣られ、その治療費もさぞかし高額なのかと思いきや、拍子抜けするほどの金額です。

ただし、がん治療に掛かる先進医療のうち、高額なものとして「陽子線治療」と「重粒子線治療」がありますが、こちらの陽子線治療は1件当たり平均2,585,912円、重粒子線治療は1件当たり3,036,828円。

確かにこうしてみると高額ではありますが、1,000万円までは必要はなさそうです。

そしてこれらの先進医療、実はどこでも、誰でも受けられるものではありません。

その理由の1つは、これらの治療はがんの種類や部位によって、治療に適しているがんと適さないがんが別れていること。

もう1つは、先進医療を受診できる医療機関の数で、陽子線治療は全国でたった10箇所、重粒子治療に至っては全国でたった5箇所でしかその治療を受けることができません。

それにもし、実際に先進医療を受ける場合でも、がん保険には診断給付金というがん保険特有の給付があり、診断時にまとまった額の保険金が支払われますから、わざわざ先進医療特約で備える必要もありません。

陽子線治療と重粒子線治療は保険適用の検討が進む

そして、これらの高額な陽子線治療と重粒子線治療も、現在保険適用の検討が進められており、近い将来、3割負担で治療を受けられる日もそう遠くないかもしれません。

さらに言うと、先進医療は何もがん治療のみに限定した治療行為ではありません。

実は先進医療特約はがん保険特有の給付ではなく、医療保険でも先進医療特約を付保することができるのです。しかも月々たったの数百円という安さで。

私の経験上、がん保険のパイオニアであるアフラックでも、医療保険のEVERに先進医療特約を付保することができました。10年前に契約した医療保険でも特約の追加は可能だったのです。

ですから、わざわざ先進医療特約のためだけににがん保険に入ることは無意味ですし、それなりの蓄えがあれば、診断給付金分もカバーできますから、わざわざがん治療のみに給付を限定するがん保険に入る必要もなくなるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。先進医療について知るにつれ、がん保険についての考え方も変わってきたのではないでしょうか。

先進医療について、以下にまとめたいと思います。

  • 先進医療は、最先端の治療ではなく、保険適用の対象となっていないものの、保険適用できるかを評価するため、保険診療との併用を認めた治療のこと
  • 先進医療は、想像するほど高額ではない
  • がんにおける先進医療で高額なのは陽子線治療と重粒子線治療、しかし医療機関は限定的
  • 先進医療特約は何もがん保険だけではない、医療保険にも先進医療特約は付保できる

「先進医療」という言葉に惑わされがちですが、がんに対する正しい知識と保険制度の現状をきちんと理解することで無駄な保険の加入を防ぐことに繋がるのです。

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