万一の備えとして医療費のためにお財布を分けておくべきか
万一、病気やけがをして入院や手術を受ける、その際に治療費が嵩んで貯金が減ってしまうことを極度に心配する人がいます。まじめな人ほどこの傾向が強いようです。
確かにこれまで貯めた貯金が減っていくのは悲しいもの。治療への不安もあり、ただでさえ悲観的になりがちですから、治療費の心配も重なれば将来も余計心配になってきます。
そうならないためにも、計画的に民間の医療保険に加入し、不測の事態に備えようという考え方をする人がいます。
この考え方に共感する人も多いかと思いますが、どこに間違いがあるか、皆さんはお気づきでしょうか。
お財布を分けるのは一見合理的に感じるが効率は悪い
不測の事態に備えてお財布を分けるのは一見合理的に感じますが、実は効率は大変悪いのが現状です。
しかしながら、お金があればつい使ってしまうといった方も多く、お金の管理が苦手な人にとっては、用途ごとにお財布を分ける方法は有効な手段であり、否定するものではありません。
問題なのは、不測の事態に備えて分けるお財布を、”民間の医療保険で手当てしようとすること”なのです。
民間の医療保険は当然ながら銀行ではありません。民間の医療保険は掛け捨てが基本の保険商品であり、数十年にもわたって(終身医療保険なら支払いも一生涯)長期分割払いする高額な買い物なのです。
それにもかかわらず、医療保険を積立貯金か何かと勘違いしている人が後を絶ちません。
治療費は医療保険で賄わなければいけない理由などない
コマーシャルなどの影響もあり、治療費は医療保険で賄わなければいけない、という固定概念が定着している人がいます。その場合、まずはその先入観からの脱却が必要です。
将来起こるかもしれない病気やけがに備えたいなら、何も民間の医療保険ではなく、積立定期預金や財形貯蓄で貯めていけばいい話です。
貯金なら保険のように手数料も差し引かれないし、保険金を受け取る時に煩わしい申請手続きも厳しい審査も受けることもありません。
医療保険なら治療に関わる全てをカバーしてくれているように感じますが、そうではありません。一見保障が充実しているようにも映りますが、細かく保障を分けて設定しているのは、あくまでも保険会社の都合でしかありません。
給付内容を細かく分けることで、保険金の支払い条件を個別に設定し、保険金支払いを抑えているのです。
しかし、保険金を受け取る立場としては、お金に色はついていませんから、細かな給付条件を気にすることなく、まとまった金額がある方が治療費に充てやすいのは明らかです。
まずはかかる治療費の大枠を知り、保険でなく貯蓄で備える
多くの人が治療費に対して不安を抱き、医療保険の加入に走るのは、治療費がどのくらいかかるか見当がつかず、いずれ貯金を食い潰してしまうのでは、という不安心理が働くから。
しかし、もしもあなたに十分な貯金があれば、同じ出費であっても安心していられるのではないでしょうか。
例えば、100万円しか貯金がない中で病気を患い、入院治療により1ヶ月10万円の医療費の請求されたとなれば、きっと皆さんは「いずれ貯金が底を尽きるのではないか」と不安になるでしょう。
しかし、治療費の負担が大きくならないよう、健康保険には高額療養費制度があること、統計上平均入院日数は60日に満たないことなど、きちんとした知識を持ち、さらに100万円よりももっと多くの貯金があったならば、数ヶ月を要する入院であっても、さほど心配にはならないのではないでしょうか。
例えば、高額な治療費がかかると言われるがんにり患した場合で、仮に先進医療を受けたとしても、ほとんどの人は300万円程度もあれば十分賄えると言われています。
金銭的に余裕がないと、治療に臨む上でも心配が尽きず、余計な不安を抱え込むことになります。その不安を一時的に軽減してくれるのが医療保険なのですが、保険にずっと頼ってはいけません。
民間の医療保険に加入するということは、保険料分のお金を一時的にも拘束されることになります。”拘束される”といっても、それは病気やけがをして保険金を受給できた場合であり、掛け捨てでほとんどは返ってきません。
それならば、保険料分を貯金に充てて、万一病気やけがをしても不安にならないだけの蓄えを準備した方がよっぽど賢明です。
貯金目標は300万円、保険はいつか解約するもの
1つの目標として、がんの治療にも耐えうる300万円を目標に貯金をするといいでしょう。
それでも貯金が貯まるまでの間のリスクが心配と言うなら、その間は医療保険に入ることも選択肢の1つですが、かける保険は最低限に留めましょう。
保険料が高額だと肝心の貯金もできませんから。
そして最も肝心なことは、民間の医療保険に加入する際には「十分な貯金ができるまでの時間をカバーする一時的なもの」という、割り切りが必要なのです。