意外に知らない保険料の内訳
そもそも保険とは、発生する可能性は少ないけれど、万一被害に遭うと経済的損失が大きい場合、同じリスクを抱えた人たちが少しずつお金を出し合い、被害者に対して保険金を支払い経済的サポートをする、いわば共助の保障の仕組みです。
保険金を100万円に設定した場合、被害に遭う可能性が1万人に1人であれば、1人当たりの負担する保険料は100円。1,000人に1人であれば、1人当たり1,000円の保険料負担となることになるはずです。
しかし現実には、保険加入者はそれ以上の保険料負担が求められます。
なぜならば、保険会社が保険を維持・管理するために必要な費用があり、保険加入者がその費用を保険料の一部として負担をしているのです。
保険料の内訳は「純保険」と「付加保険」で構成される
生命保険に掛かる保険料には大きく、保障に充てられる「純保険」と、保険を運営・維持するための「付加保険料」に分けられます。
民間保険において、保険料の金額に差がありますが、実は純保険については各社ほとんど差がないと言っても過言ではありません。
なぜならば、死亡リスク等、純保険料算出の根拠となる率表(「標準生命表」等)は、基本的に業界標準となるものが存在し、皆多くは共通のものを使用して算出しているからです。
保険会社が極端に低い発生率で独自に純保険料を算出・設定した場合、保険料は当然安く抑えることはできますが、実際には純保険は金融庁の審査対象であり、不当な保険料引き下げで保険会社が破たんしないような仕組みになっています。
もしも独自のリスク率表を用いるためには、各社が長期に渡って統計を蓄積するなど、しっかりした根拠のある数字が必要になるのです。
「付加保険料」はブラックボックス化されている
付加保険料は、保険を運営・維持するための費用に当たる保険料のことです。例えば、保険会社の人件費や店舗維持費、手数料や広告宣伝費などがこれに当たります。
そしてこれらの費用については、多くの保険会社がブラックボックス化しており、保険加入者は簡単にその内容を知ることはできません。
つまり、私たち保険加入者は、被災しない限り保険金を受け取ることはできませんが、仮に被災したとしても受け取ることができるのは純保険料に当たる部分だけ。
一方の保険会社には、加入者が増えればその分だけ、付加保険料が収入として入ってきます。
民間保険に入るには費用が掛かることを忘れがち
同じ保障内容で保険料に差があるのは、この付加保険料によるところが大きいです。
インターネット販売の民間保険も増えましたが、インターネット専業の保険会社などでは店舗を持たないために付加保険料が安く抑えられるため、相対的に保険料も安くなる傾向がありますが、それでもゼロではありません。
「民間保険に入るのだから費用が掛かるのは当然だろう」とおっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、それは民間保険に加入することが大前提の話。
民間保険に入らなければ付加保険料を払う必要もありませんし、もしも自家保険として自らしっかりと貯蓄していれば、わざわざ民間保険に加入する必要すらありません。
民間保険の活用については、万一のリスクに対して、自ら貯蓄などで自家保険を備えるまでの言わばつなぎの役割であり、民間保険に加入することは”時間を買う”ことに他なりません。
つまり、民間保険は一生加入し続けるものではないのです。
リスクを補完できるだけの蓄えができたら、民間保険は解約するなど定期的に見直す癖をつけましょう。
さもなければ、同じリスクを抱え、不幸にも被害に遭った人のために活かされる純保険料だけでなく、保険の維持・管理の費用負担である付加保険料まで、ずっと負担し続けることになるのですから。